池田清彦「環境問題のウソ」を読む:第1章(6)
第3節:人為現象それとも自然現象
この節では、世界の気温変動が人為的なものなのか、それとも単なる自然現象なのかを論じている。私が読む限り、この節が最悪。
先に述べたGISSの世界の気温の変動データによれば過去百年間に世界の平均気温は〇・五ー〇・七℃上昇した。一応これを信じるとしても、それは巷で言われて言われているようにCO2の人為的排出だけが原因のすべてだとはとても思われない。(中略)地球の平均気温は一丸四〇年から七〇年まで三〇年間で〇・二℃下降したにもかかわらず、CO2の濃度は三一〇ppmから三二五ppmまで急激に増大している。全世界の年間炭素排出量を見ると、一九四〇年ころまではせいぜい一〇億トンだったものが、一九七〇年には四〇億トンに増大している。これだけでも、人為的地球温暖化説はあやしいと私ならば思ってしまう。少なくとも地球の気温にはCO2以外の要因が働いていることは絶対に確かであろう。
p25-27
こういったコンピュータのシミュレーションモデルがデータ整合的にならないのはなぜなのか。より重大な原因を見落としているのではないか。もっとはっきり言えば、CO2濃度の人為的上昇のみを温度上昇の原因とするモデルは間違っているということだ。
p31
次に筆者は太陽活動について取り上げ、
気象庁が一九八九年に発表したレポートには「地球全域の平均海面水温の長期変動は、太陽黒点数の長期変化とよく対応していること書かれ、過去一二〇年余りの変動グラフが載っている(図8)。これを見ると大腸黒点数が増加した時には水温が上がり、減少した時には水温が下がっていることがよくわかる。CO2の増加が温暖化の主因とする説では説明できなかった一九七〇年頃の低温も、太陽主因説でうまく説明できる。太陽黒点数はこの時期、その前後に比べずっと少なかったのである。
p33-34
と書いている。これらを読むと、筆者が人為的地球温暖化説についてまったく無知であることがよくわかる。要するに、筆者は人為的地球温暖化説がCO2濃度の人為的上昇のみを温度上昇の原因とする説だと誤解しているということだ。これはこのイラストを見てもよくわかる。
だがしかし、そのような筆者の理解は明らかに間違っている。たとえば、IPCCの第三次評価報告書では過去の気候変動がCO2濃度等の人為的要因だけでも、太陽活動等の自然的要因だけでも再現が不十分で、両者をともに考慮することによって最もよく再現できると書かれている。ここでは筆者が指摘するようなCO2の増加が温暖化の主因とする説では説明できないとしている1970年頃の低温も再現されている(もちろん再現されているからといって、将来にわたってそのモデルの正しさが証明されるわけではないけれど)。
結局のところ、筆者が想像しているような、CO2のみを温暖化の原因と決めつけているような専門家は筆者の脳内にしか存在しないということなのだ。
現在専門家の間で議論が行われているとすれば、温暖化が人為現象なのか自然現象なのかという単純な議論ではなくて、温暖化には人為現象と自然現象のどちらがどの程度寄与しているのか、という程度問題の議論だろう。
これまでの歴史の中で、ある学説が、その学説を理解していない者による批判によって覆された例を私は知らないし、これからもないであろうと、私は思う。
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