2006年5月31日 (水)

トヨタのリコール台数急増はコスト低減のせいか

トヨタがリコールを出したそうだ。私はプリウス乗りなので少々気になったが、気になったのはリコールの内容よりもその規模の大きさ、そしてその原因についての分析記事だ。

トヨタ:リコール台数急増、コスト低減努力と表裏一体

 トヨタ自動車の大量リコール(回収・無償修理)が相次いでいる。30日に同社が国土交通省に届け出たのは9車種で計56万台。今年の累計はすでに80万5000台となり、過去最悪の189万台を記録した04年のペースを上回る。トヨタブランドの根幹となる品質、信頼性を揺るがしかねない事態に同社は危機感を強め対策に乗り出しているが、生産コストを引き下げるため進めてきた複数車種の部品共通化が裏目に出た側面もあり、一朝一夕に歯止めをかけることは難しいようだ。

 今回の不具合はかじ取り装置と呼ばれる個所で、ハンドルとギアボックスとを結んでいる軸の強度不足が明らかになった。使い続けると、ハンドル操作ができなくなる恐れがあるという。対象になったのは「カローラ」のほか、ミニバン「ウィッシュ」やハイブリッド車「プリウス」などの人気車種。

 トヨタは昨年10月に1件で128万台の大量リコールを出しているが、このように発表1件当たりの回収台数が急増しているのが最近の特徴だ。背景にはここ4、5年で、部品の共通化を進めたことがある。

 国内外で激化する販売競争を勝ち抜くため、トヨタは部品メーカーとともに、計画的にコスト削減と生産効率化を進めてきたが、その有力な手段の一つが、生産車種ごとに専用部品を開発・使用するのではなく、部品を極力共通化することだった。しかし今回のケースのように、共通で使った部品に不具合が発生すると回収台数が大幅に増えるという、思わぬ弊害も抱えることになった。

 10日の決算発表で、渡辺捷昭社長は「品質はわれわれの命綱」とし、リコール増加に対する危機感をあらわにした。6月の役員改選で品質選任専務を置くほか、すでに品質保証や設計などの担当者によるチームをつくり、リコールで明らかになった生産現場の問題点を早めに改善させる活動を始めている。

 ただ、こうした取り組みは今後の生産車が対象で、過去の生産車からは、まだ新たな不具合が見つかる可能性がある。長年積み重ねてきた信頼を失いかねない事態だけに、トヨタは回収対象車の保有者への対応に万全を尽くす方針だ。【小川直樹】

毎日新聞 2006年5月30日 21時04分 (最終更新時間 5月31日 10時27分)

リコール台数が過去最悪のペース、というけれど、販売台数の変化も考慮しなければならないだろう。トヨタ車の生産台数は10年前と比較すると2割ほど増加している。生産台数が増えればリコール台数も増えるのも当然だ。安全性を比べるならば、生産台数当たりのリコール台数で比較するのが真っ当な方法だろう。それに、今回のリコールは56万台で、今年の累計が80万5000台ってことは、今回のリコールが出されるまではたったの24万5000台ということになる。交通事故による死者数のようにごく少数の積み重ねと異なり、このように一気に値が変化するような値について過去最悪のペースという考え方を用いるのはいかがなものか。

このように安全性が揺らいでいるという現状分析に疑問はあるものの、とりあえず、生産台数当たりのリコール台数も増加しており、安全性が揺らいでいると仮定して話を進めよう。

確かに、リコール1件当たりの回収台数が急増しているのは部品の共通化による影響だろう。まあそれは言ってみれば当たり前の話。

でも、どうしてそれが部品の共通化の弊害になるの?私から見たら、それはどちらかというと部品の共通化の利点になっているように思える。

たとえば、従来は10車種に対して合計100万点の部品を使用し、そのうち10点に欠陥があって10件のリコールを出していたとする。それが部品の共通化によって使用する部品が1/10、つまり10万点に減少し、そのうち1点に欠陥があって1件のリコールを出すようになったとしよう。この場合、一個の部品当たりの欠陥率は両者の間で差がない。両者を比較すると、販売台数当たりのリコール対象台数は同じだ。つまり、安全性には変化がない。リコール対象台数が同じで安全性に差がなく、リコール件数が減るとしたら、その方が事務手続きが楽になってメリットがあるように思えるが。

真に問題なのは、部品を共通化したこと、そしてその結果リコール1件当たりの回収台数が急増したことではなく、部品を共通化したにもかかわらず、一個の部品当たりの欠陥部品が発生する確率が増加していることにあるのだろう。この原因が部品を共通化したことにあるのかどうかは私にはわからない。そうでない可能性もあるだろう。

このように、まだ原因もはっきりしていない(さらに言うなら安全性が揺らいでいるかどうかもはっきりしていない)にもかかわらず、部品の共通化によるコスト低減努力とリコール台数の急増との間に関係があるかのような書き方は読者をミスリードする可能性が高い。

マスコミはしばしば自分の都合のいいようにこのような手法でミスリードを誘い、世論を操作することがある。今回の記事の場合は単に担当記者の分析能力が低かっただけで、わざとやっている風ではないが、こういった間違いが広まらないよう、書く側も読む側も注意したい。

Banner_04_2

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2006年2月10日 (金)

プリウスの燃費は昼と夜でだいぶ違う

私はプリウスに乗っていて、毎日片道50kmを通勤しているが、このあいだ燃費を測ってみたら、行きと帰りでだいぶ燃費に差があることに気がついた。

行きはおよそ25km/L、帰りはおよそ21km/L。4km/Lもの差がある。

この原因は気温の差だ。行きは午前10時ー11時ころで、比較的暖かかった(だいたい15℃くらい)のでヒーターをオフにしてあった。一方、帰りは午後10時ー11時ころで、結構寒かった(だいたい3℃くらい)のでヒーターをつけて暖房にしておいた(A/Cはoff)。

ある程度差が出るだろうと予想はしていたが、ヒーターのオン/オフでこんなに差が出るとは意外だった。

普通の車の場合、ヒーターの熱はエンジンの排熱を取り込むので、ヒーターをつけただけではほとんど燃費に影響はない。ところが、プリウスは燃費がいいためにわざわざ暖房のためにエンジンを回す、ということをする。本来ならアイドリングストップすべき時もエンジンを回す。これが燃費の悪化につながる、というわけだ。

計算してみると、暖房に使うガソリン代は片道およそ400mL、50円くらい。これをケチって厚着をするか、それとも仕方がないものとして諦めるか。悩ましいところだ。

Blog_ranking_2

| | コメント (0) | トラックバック (1)