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2006年6月15日 (木)

トンデモの片棒を担いじゃった中西準子

環境問題に関心がある人で中西準子の名を知らない人はそうはいないだろう。リスク論の専門家であり、環境リスク学―不安の海の羅針盤などの著作などでも知られる。その中西準子がトンデモにコロッと騙されちゃったという話。

問題の文章はこちら。

雑感349-2006.6.13「原子力発電と温暖化」

前半は「原子力と環境」(中村政雄著、中公新書クラレ)の書評となっている。こちらについてはまだ未読だし、評するほどの知識もないので飛ばしておこう。

次からが問題の部分。

「CO2温暖化説は間違っている」(槌田敦著)

この本は、槌田敦さんがほたる出版から出しているのだが、「原子力と環境」を読んだ方には、逆の見方を知るという意味で、この本も読むことを勧めたい。槌田さんは、(かつて)所謂市民派研究者の代表的な人で、エントロピー学会の創設者の一人である。彼は、この本の中で徹底的にCO2による地球温暖化説を否定する。大気中二酸化炭素濃度の増大は、気温の上昇の結果であり、原因ではないと主張する。それは、なかなか説得力がある。

槌田敦かよ。件の本は取り寄せ中で未読だが、今年2月に開催された温暖化の原因と対策についての賛否討論会レジュメアマゾンのレビューを読む限り、いつものやつであろうと推察される(読んだらまたフォローします、本当は買いたくなどなかったのだが)。ひとことで言うと槌田説のキモであるCO2自然起源説はトンデモあるいは疑似科学であり、科学ではない。具体的にどのあたりがトンデモかはここでは触れない。知りたい人は私の記事温暖化いろいろ「温暖化懐疑派・否定論」 の記事明日香壽川(東北大学)らのコメント討論会で使われたパワーポイントなどを参照されたい。そのようなトンデモ説を中西氏は信じちゃったようだ。まあ、温暖化のメカニズムについて勉強したこともないしろうと(*1)だから、説得力があると思ってしまっても仕方がない点はあるかもしれないが、「温暖化説の仕掛け人は原発業界」とか「CO2温暖化説に批判的な論文は定評ある学術誌には掲載されない」とかいうトンデモ論に典型的に見られる陰謀論(*2)がちりばめられているにもかかわらず、それには気付かなかったのだろうか。というより、むしろ積極的に支持している風でもある。槌田説の論文が定評ある学術誌には掲載されないのはCO2温暖化説に批判的だからではなく、間違っているからに過ぎない。実際、CO2温暖化説に批判的な論文が定評ある学術誌に掲載された例はある。よしんばCO2温暖化説に批判的な論文が掲載されないという風潮があったとしても、掲載されないという事実のみから学会にこのような風潮があると結論づけることはできない。

問題は単にトンデモを信じちゃったことのみにとどまらない。

では、おまえは?

では、おまえはどう考えるのか?と聞かれそうである。

答えは、相当日和見である。二酸化炭素による温暖化はあり得るが、今の学説やモデルでの推計がどの程度正しいかは分からない、したがって、二酸化炭素排出を一定程度削減すべきだが、がむしゃらに二酸化炭素排出を削減すればいいというものでもない(逆の問題が起きるような対策には注意が必要)。冷静に観測して、証拠を集めるだけの時間もあるし、また、厳しく削減すれば、一挙に生活を直撃するし、資源戦争を誘発するかもしれないような難しく重大な課題だから、もっと、科学的な根拠が共有されなければ、やはり無理なのだと考えている。

その意味で、学会やあらゆる紙面、テレビ等は両方の意見に対して開くべき時と思っている。特に学会には注意してほしいと思う。多数決で統一見解を出すことが必要な時もあるだろうが、多数派の意見が間違いかもしれぬという思いを常に残した、運営、議論の場の設定がどうしても必要だと思う。これは、6月号の中央公論に書いたことと同じなのだが。

温暖化対策について日和見主義であること自体は別に問題ではないように思う。問題はその次だ。学会やあらゆる紙面、テレビ等は両方の意見に対して開くべき、って言うけれど、そもそも学会が開かれていないという認識って正しいの?おそらくこれは「CO2温暖化説に批判的な論文は定評ある学術誌には掲載されない」という主張を受けてのものだろうが、こういった風潮が実際にあるのかどうか、どうして温暖化のメカニズムについて勉強したこともない中西氏に判断できるのだろう?どうして「単に間違いだらけなので掲載された」わけではないと判断できるのだろう?このような判断は温暖化メカニズムに熟知した者でないと無理であると私は思う。それとも中西氏は一般書を一冊読んだだけで温暖化メカニズムを熟知したつもりになっちゃったのかな?

中西氏の著書を読むと、これまで氏が学会その他が抱える不条理な面に直面してきたという点があり、それへの反発が現在の氏を形作ったとも言えそうだ。確かに学会やマスコミの姿勢は時として偏向することがあるのは事実だろう。そういった体質を批判しようとする氏の姿勢は理解できないわけではない。しかし、だからといって両論を熟知していない者が安易に両論併記などと主張すべきではあるまい。それはかえって専門家による相互批判とそれによる理論の取捨選択で成り立ってきた学会本来の良さを消してしまうことになるだろう。議論されずに捨てられた理論に対して、その理論を熟知した者が「もっと議論せよ」と言うのは正しいが、議論されて(あるいは議論されるまでもなく)捨てられた理論に対して、その理論を熟知していない者が「もっと議論せよ」と言うのは戯言にしか過ぎない。中西氏がやっているのは後者の方だ。氏の主張は、進化論や相対性理論に対して無知な者が「創造論や相対性理論は間違っているという説はあり得るかもしれない。学会やマスコミはもっと両方の意見に対して開かれるべきだ」という主張をしているのと何ら変わりがないように私には思えた。

また、マスコミの偏向報道関連についてはマスコミの温暖化報道は偏向しているかで既に述べた通りだ。

結局のところ、一般書一冊で「わかっちゃった」つもりになったという自己の能力への過信がこのような愚論を導いているのではないだろうか。「なかなか説得力がある」と考えた時点で「自分の持っている浅薄な知識ではそう思えるだけかもしれない」という自己批判精神があればこのような事態にはならなかったように思う。このように、実績を積み上げてきた人物が調子に乗って能力以上のことをしようとしてしまうという症状は老害の症状の一つだが、中西氏も耄碌したってことなのか。少々辛辣な批判だったかもしれないが、氏の実績と評判を考えると、このくらいやらないと悪影響が広まる可能性が高いように思える。トンデモの片棒を担いだ、っていう表現も多少大げさかもしれないが、結果的に見るとそうなってしまったように思える。本人の意志でやったわけではないのだろうが。

(*1)本人の弁による。

(*2)「人類の月面着陸というねつ造はアメリカの陰謀」とか「進化論に批判的な論文は定評ある学術誌には掲載されない」とか。

(追記:懐疑論への反論を追加しました。2006/06/16)

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コメント

いわゆる反体制学者どもは、自分の主張に係る結論までが、確定的でないにもかかわらず、そのの結論を論拠にして、ガムしゃらに、体制側学者を、こき下ろすことに明け暮れ、それでジブンは、税金泥棒しかやってないのに、Theman of scholar.であると思い込んでいる、要するに、税金で、メシを食っているのに、雇用主をこき下ろし、自分の頑迷な主張を入れざる輩に対し、アアでもない、コウでもないと揚げ足を取って、イチャモンつけるのを、専らとする阿呆じゃ!!。

投稿: chinn007 | 2012年7月 4日 (水) 02時20分

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