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2006年5月11日 (木)

割り箸問題:中国が生産制限

 割り箸の使用の是非について、かつて「割り箸論争」として世間を賑わせた記憶があろうかと思う。割り箸反対派は使い捨ての象徴である割り箸を森林破壊を引き起こすとして「マイ箸」を持ち歩き、賛成派は割り箸は間伐材なので問題ない、と主張していた。

 で、現状はというと、最近はほとんどが間伐材の利用ではなく、中国産の皆伐材を原料としているようだ。その中国が森林保護を理由に生産を制限することになったようだ。

割りばし 輸入先・中国が生産制限 弁当業界などに影響

 使い捨ての代表格として、国内で年間約250億膳(ぜん)が消費される割りばし。その9割を占める輸入先・中国が生産制限を決め、弁当や外食など関連業界に影響が出始めている。安さに飛びつき、国内生産地を切り捨ててきたツケとも言え、業界・消費者双方に農林業生産空洞化の問題を示す一例だ。【小島正美】
 “中国ショック”は2段階で到来した。最初は昨年11月、中国の輸出団体が「原木の高騰」などを理由に、日本割箸(わりばし)輸入協会(大阪市)に50%もの値上げを通告してきた。それでも中国産は1膳約1~2円。国産は同2~20円程度なので、まだ価格面の優位性は動かなかった。
 ところが今年3月、今度は中国政府が「森林保護」を理由に生産を制限し、将来的には輸出も禁止すると決めた。建築には使いづらいシラカバや他の間伐材を主原料にしているが、森林乱伐による洪水や砂漠化などが問題化する中、矛先の一つになった形だ。
 では、日本国内の状況はどうか--。実は20年前まで、割りばし生産量の約半数は国産だった。ところが90年代以降の低価格競争の波の中、安い中国産が急激に増え、気が付けば9割を超えるまでになっていた。
 国内の2大産地は北海道と奈良。高級品主体の奈良は今も命脈を保っているが、中国産と競合した北海道は壊滅状況だ。85年当時、北海道には生産会社が約70社あり、約1900人の従業員がいたが、04年現在で8社約40人にまで激減した。山口晴久・同協会広報室長は「このままだと、いつ割りばしがなくなってもおかしくない状況になってきた」と危機感を抱くが、一度減った生産量は簡単には戻らない。
 外食や安売り店には、既に影響が出ている。
 100円ショップなどに割りばしを卸すアサカ物産(東京都三鷹市)は、1袋80膳入りを50膳入りに変えてコストアップに対応し始めた。
 全国で約760店の居酒屋などを展開するマルシェ(大阪市)は年間約1500万膳を使ってきたが、2月からフランチャイズを含めた全店でプラスチック箸に切り替えた。さらに、直営の約250店では「MY箸」ポイントカードを作り、はしを持参した客には1回50円のポイントを付け、10ポイントで500円分の飲食をサービスするほか、50円を自然保護団体に寄付する活動を始めた。直営の居酒屋「酔虎伝・新宿三丁目店」(東京都新宿区)の石本千貴店長は「割りばし廃止への苦情はありません」と安堵(あんど)する。
 一方、コンビニ業界は「物流コストの削減などで吸収する」(セブン&アイ・ホールディングス)「しばらくは現状のまま」(ローソン)と、推移を見守っている状況。
 輸出禁止は本当にあるのか、あるとすればいつか。今後は中国政府の動きにかかっているが、山口室長は「弁当や外食なども、いずれ消費者がお金を払って割りばしを買う時代がくるのでは」と予測している。

(毎日新聞) - 5月9日17時12分更新

 冒頭でも見たように、割りばし=使い捨て=環境破壊という見方は少々単純すぎるだろう。かといってなんの問題もない、というのも極端すぎる。状況はそれほど簡単ではないのだ。

 まずは、原料となる木材の出自によって大きく異なる。国産の間伐材なら、原料を伐採することによって環境負荷が生じることはあまりないと言える。一方、中国産の皆伐材なら、環境負荷の程度は大きい。じゃあ国産ならいいのかというと、単純にそうとは言えないのが難しいところ。確かに原料となる木材は環境負荷にはつながらないが、割りばしの製造・包装・輸送の段階でエネルギーや資源を消費する。じゃあ割りばしを使うこと自体が悪いかというと、必ずしもそうとは言えない。割りばしを使わなければ、プラスチックやその他の再利用する箸を使うことになる。それを製造したり、洗浄したり廃棄するのにエネルギーや資源を消費する。

 じゃあどうすればいいのだろう。こういった問題を解決するのに有効な手段としてはLCAが挙げられる。LCAは製造段階から廃棄までその製品のライフサイクル全体を通した環境負荷を見積もる方法だ。この手法を用いて中国産割りばし、国産割りばし、再利用箸の環境負荷を見積もればどれを使えばいいのかがわかるというわけだ。ただ、この見積もりはけっこう手間がかかるので、なんでもかんでも簡単に答えが出るわけではない。割りばしの環境負荷のLCA的な見積もりもどうやらなさそうだ。このような場合は、何が間違っているのか、そして実際に問題が出ているかどうかを基準に考えるのが良いように思う。

 今回の場合、中国で皆伐を受けた森林は再植林はなされていないようだ。これは持続可能な開発とは言い難い。そのような行為について何も問題がないとは到底言えないだろう。実際、森林乱伐による洪水や砂漠化などの問題が顕在化してきている。このような現状では、このような制限のない伐採にストップをかけるという判断は(少なくとも国益という観点を超えて一人の地球人として見た場合)妥当だろうと思う。これで他の場所にしわ寄せが出る可能性はあるけれど、その時はその時だ。環境問題に正解はないのだから、現状で考えられるもっともマシな選択をするよりしかたがない。

余談だが、割りばしをめぐる環境問題についてはこちらがよくまとまっている。

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コメント

割り箸をやめるのは税金対策です。
いくらでも操作できるコンピューターによる売り上げ・支払い管理と違って、消耗品は税務署員が目をつけやすくいい逃れができないから。
バカな国民はエコだと思って喜んでいますが、医療機器が使い捨ての今、口の中に入れる物が使い回しというのは、医療関係者の立場としては疑問です。

投稿: ス~ッZ | 2018年9月23日 (日) 12時06分

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いくつもの居酒屋をフランチャイズ展開しているマルシェ株式会社では「愛のマイ箸一億人運動!」という運動を実施しています{/face_warai/} 国民全体(乳幼児・小児以外の約一億人)が内・外食を摂取する際に、「マイ箸」を使用することを習慣付けることが目標だそうです・・・すごくダイナミックな目標ですよね{/ee_2/} 僕も微力ながらこの運動を支援していきたいと思っています{/face_fight/} 「愛のマ�... [続きを読む]

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