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2006年4月13日 (木)

マスコミの温暖化報道は偏向しているか

このところ「地球温暖化」等のキーワードでググってみると、ブログや掲示板等で「マスコミの温暖化報道は偏向しており、温暖化が二酸化炭素のせいであることが科学的に証明されているかのように報道されている。だが実際調べてみると、温暖化が二酸化炭素のせいであることが証明されたというには程遠い、単なる仮説に過ぎないことがわかる。マスコミはこれまでのような偏向報道を止めて、もっと多様な考え方を紹介すべきだ」といったような論調に出くわすことがある。

私はこのような主張を読むたびに考え込んでしまう。確かに現状認識としてはほとんど正しいことを言っている。にもかかわらず、この手の主張にはどうしても諸手を挙げて賛成できないのだ。

地球温暖化の最大の要因が二酸化炭素である、という説(以降、温暖化人為説と呼ぶ)は完全に証明されたものである、といった類のものでないことは言わずもがなだろう。しかし、だからといって単なる仮説に過ぎない、というのも言い過ぎだ。全ての科学理論は完全に証明されることはないので、全ての科学理論は仮説である、というのと同じ意味では温暖化人為説は仮説ではあるのだろうけれど。

私は、このような温暖化人為説を単純に仮説なのか、それとも証明されたのかという2分法で考えるのは得策ではないと思う。もっとアナログ的な、確からしさという尺度で考えるべきだと思う。温暖化人為説の確からしさとしては生命宇宙起源説よりは確からしい一方、大陸移動説よりはあやふやだろう。程度表現でいうなら、専門家の多くが正しいと考えている程度の定説、といった辺りだろうか。

だからといって、私は単純にマスコミを「証明されたかのような報道をしている」と批判する気にはなれない。それを言ったら、大陸移動説だって完全に証明されたわけでもないのに証明されたかのような報道をしている、と批判しなければいけなくなるだろう。どんな科学理論にしろ完全に証明されてはいないのだから、上のような批判を無制限に行ったら、どのような理論も批判の対象となってしまう。要するに、そもそも証明されたかのような報道をもって字義通り証明されたと理解すること自体が間違っているのだ。決めつけのような報道があってもそれが将来覆される可能性があることを考慮しつつ受け入れる、というのが正しい受け止め方のはずなんだが、そのような約束事を理解せずに鵜呑みにしてしまうと騙された気分になってしまうのだろう。

ここで終わると、「問題の程度が違うだろう」という反論が来そうなので補足しておこう。確かに、上で書いたように温暖化人為説の確からしさはそれほど高いものではない。決めつけのような報道が許されるとはいっても、あまりにも確からしさのレベルが低いものまで許してしまうとかえって混乱を助長させてしまうだろう。それを防ぐという意味では、あやふやな理論を決めつけで報道すべきではない、という批判はそれなりに意味のある行為だ。

ただし、そのような批判は、批判する者が理論について、その確からしさのレベルを十分理解してはじめて意味を持つということを理解すべきだ。その理論について精通していない者が理論の確からしさについて言及できようはずがないことは言うまでもなかろう。

例えば、アメリカ教育界における進化論と創造論の問題を取り上げてみよう。現代科学では進化論はかなり確からしいとされている一方、神が一日にして全ての生物種を造ったという創造論は科学的には間違っているとされている。生物進化について正しい理解をしている者ならば、「進化論について証明されたかのような教育をしているのは偏向教育であり、創造論も教科書に取り上げるべきだ」というような主張は決して行わないだろう。そのような馬鹿げた主張をするのは決まってその理論を理解していない者だ。

進化論と創造論のような、真偽がかなりはっきりしている理論に比べると、温暖化人為説に関する理論はもっと混沌としている。温暖化人為説は進化論ほど確からしくはないし、それを否定するような理論も温暖化太陽説のように考慮に値するものから、二酸化炭素自然起源説のような取るに足らないものまで様々だ。そういう意味では、決めつけのような報道への批判は進化論と創造論の問題と比べるとそれなりに意義がある可能性はあるだろう。ただし、それは上でも書いたように、温暖化問題について正しく理解している者が行うべきことであって、理解が不十分な者が行うべきことではあるまい。

・・・とは言うものの、マスコミの中にも偏向報道だと思わざるをえない場合があって、それが混乱を生んでいるというのは否定できないのだけれど。

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