巷じゃ堀江メールはガセ、というのが大勢のようだ。本当にガセかどうかはともかく、これ以上堀江メールが本物であるという確証は出てきそうにもない。永田寿康衆院議員はテレビのインタビューに「情報提供者は友人として信頼していた。その友人が言うのだから間違いない」などと答えていたが、もうワキが甘いとしか言いようがない。しかし、この人に限らず、ガセネタを信じてしまう人ってのはいるし、日常的にもそういう場面には結構出くわす。今回はそんな実例を挙げて、ガセネタを掴まない、信じないためにはどうすればいいのかを考えてみる。
始まりは単なる情報提供だった。
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NASAの研究者によると、グリーンランドの氷が予想を上回る速度で溶け出しているそうだ。これから、今までのモデルでは予想できない速度で氷山は崩壊し、今世紀末には海面は20m(引用者注:後に25mに訂正された)上昇すると予測している。もう、カーボンの捕集などという、未来の技術に期待していられない、今ある技術で10年以内に二酸化炭素の放出を削減しないと地球は崩壊すると警告している。
今年の寒波は氷山の融解に伴う寒気の南下によると、素人的には考えてしまう。
海面が25mも上昇するってのには正直驚いた。IPCCの第三次報告書でもその範囲は0.09~0.88mと予想されている。いくら予想を上回るとはいえ、この数字は桁違いだ。しかも、グリーンランドの氷床がすべて融けたとしても海面水位の上昇はが約7m程度にしか過ぎないと予測されている。25mも上昇するとなると、南極の氷床の多くが融けることになる。しかし、現在の予測では南極の氷床の質量は,降水量の増加によって増える可能性が高いとされている。
この時点で考えられる可能性は3つ。
1.NASAの研究者(後にハンセンだと判明)は確たる証拠をもってそう主張している
2.NASAの研究者は単にホラを吹いているだけ
3.どこかで誤読している
この情報にはやはりROMの人たちも不審に思ったらしく、ホラだのネタ元を出せだの言っているが、情報提供者であるglobalwarningjpさんは「NASAの研究者が言っているんだから間違いない」の一点張りで、結局ソースは示されないまま。
仕方がないので自分で調べることにする。「ハンセン 25m 温暖化」でググったがヒットせず。「Hansen 25m warming」でググる。発見。UK/インディペンデント紙2006年2月17日の記事だ。
Climate Change: On the Edge:Jim Hansen
要約すると、グリーンランドの氷床が予想より速く融けてきているという事実が明らかになったというもの。そこで氷床の融解と海水面の上昇に関して、過去の例を紐解いている。
How fast can this go? Right now, I think our best measure is what happened in the past. We know that, for instance, 14,000 years ago sea levels rose by 20m in 400 years - that is five meters in a century. This was towards the end of the last ice age, so there was more ice around. But, on the other hand, temperatures were not warming as fast as today.
How far can it go? The last time the world was three degrees warmer than today - which is what we expect later this century - sea levels were 25m higher. So that is what we can look forward to if we don't act soon. None of the current climate and ice models predict this. But I prefer the evidence from the Earth's history and my own eyes. I think sea-level rise is going to be the big issue soon, more even than warming itself.
問題の部分は"The last time the world was three degrees warmer than today - which is what we expect later this century - sea levels were 25m higher."の部分だ。これは「今世紀末に海面が25m上昇する」という予測ではなく、「今世紀末の気温として予測されている、現在より気温が3℃高かった最後の時代、海水面は25m高かった」という過去についての記述だ。
というわけで、結論としては
3.どこかで誤読している
が正解のようだ。
この実例から、あやふやな情報を掴まない、また提供しないためにはどうすればいいのかが見えてくると思う。具体的には
- 伝聞情報ではなく、情報源に当たること
- 情報を提示する際は、情報源(引用元)を明示すること。また情報源の開示を求められた場合はそれを明らかにすること
こうやって書くと、至極当たり前のことなんだけどね。
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